| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-108 (Poster presentation)
社寺はその構造的特徴から,様々な哺乳類による侵入事例が存在する.特に近年侵入が増加し,被害が深刻な種としてハクビシンPaguma larvataがあげられる.獣害において,周辺環境の管理は有効な対策である.そこで社寺の周辺環境として社寺林に着目した.本種と社寺林の関係を明らかにし,本種による社寺への侵入の基礎的知見を得ることを本研究の目的とした.
東京都目黒区内の社寺19ヵ所を対象とした.現地調査では,目撃情報,侵入の有無などについて聞き取りを行い,建造物および樹木への痕跡の有無を記録した.調査地の樹林地を抽出するため,GISを用いた.処理後の画像に社寺と区全体の本種の目撃情報121地点をプロットした.さらに社寺から半径400m(本種の平均的な行動圏)のバッファを発生させ,バッファ内の目撃地点を算出した.また各目撃地点と樹林地との最短距離を計測し,各目撃地点から半径310m(本種の最小行動圏)のバッファを発生させた.上記の調査の結果を基に一般化線形モデル(GLM)を構築した.バッファ内の目撃地点を応答変数に,社寺に本種を誘引すると考えられた環境要因を説明変数とした.
現地調査の結果から,17ヵ所の社寺で本種が出現したことが明らかになった.樹木調査からは,痕跡があった樹種はツバキ属が特に多く,採食に利用されたと考えられた.統計解析の結果では,カキノキの有無が有意に正の値を示した.これより,社寺林の構成種は本種の餌となる樹種が存在することが明らかになった.GISの結果では,最小行動圏内に樹林地が含まれていた目撃地点は118地点であった.このことから900㎡以上の樹林地の周辺に本種が出現することが示唆された.よって,以上の環境的要素を持つ社寺林は本種を誘引し,社寺への侵入を誘発する可能性があると考えられた.