| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-113 (Poster presentation)

野生ニホンザルの腸内細菌叢は採食パターンに応じて変化するのか

*澤田晶子(京都大・野生研/霊長研),早川卓志(京都大・霊長研),栗原洋介(京都大・霊長研),半谷吾郎(京都大・霊長研),岸田拓士(京都大・野生研),阿形清和(京都大・理学)

食物の消化や吸収に密接に関連する腸内細菌は、宿主である動物の適応度を左右する非常に重要な存在である。屋久島の野生ニホンザル (Macaca fuscata yakui) の採食生態への理解を深める指標として、次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢解析をおこなった。腸内細菌叢は、特定の細菌種の比率から3つのタイプ(エンテロタイプ)に分類できる。本研究の結果、調査期間(2012年10月~2013年9月)を通して、ニホンザルはPrevotellaタイプであることが判明した。これは、炭水化物中心の食事と関連するエンテロタイプであり、屋久島のニホンザルの主要食物が果実・種子・葉といった植物性食物であることを反映していると考えられる。採食パターンによる影響をより詳細に検証するため、主成分分析をおこなったところ、同じPrevotellaタイプであっても、季節によって腸内細菌の構成が異なることがわかった。葉食期のニホンザルは、果実/種子食期および昆虫食期とは異なる腸内細菌叢をもつ。繊維含有量の高い葉を効率よく消化・吸収するため、セルロース分解菌のような繊維消化に特化した細菌種が増えたためではないかと推測する。今後、これらの細菌種の機能群を特定することで、他の葉食スペシャリストとの類似点および相違点について議論したい。


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