| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-116 (Poster presentation)
昼行性の生物にとって、夜間は活動を休止する時間帯で、その際、捕食者による攻撃や風雨を避けることができる安全な睡眠場所の選定は、翌日の活動を保証するための生存確率を高める上で重要である。ハナバチ類において、ミツバチのような真社会性の種は、雌雄とも自らの巣を越夜場所として利用する。しかし、単独性の種では、オスは個々に越夜を行ない、営巣中のメスは巣穴を利用して越夜するとされてきた。一方、フトハナバチ属を始めとする幾つかの種では、複数のオス個体が集団を形成して越夜することが知られている。つまりオスにはさまざまな越夜の方法があると考えられるものの、メスによる越夜集団はこれまで報告されてこなかった。南西諸島に生息する単独性種のミナミスジボソフトハナバチは、オスのみの越夜集団の他にも、メスのみ、もしくは雌雄混成の越夜集団を形成していることが明らかになっている。5月と6月に西表島で行なった野外調査の結果、雌雄とも、枯れた枝や蔓、細長い葉を越夜場所として、個体が連なるようにして集団を形成しており、各個体は大顎のみを使ってぶらさがるような体勢を維持していた。集団形成には雌雄間で季節変化が認められ、オスの集団は主に5月に見られ、メスのみ、もしくは混成集団は6月に確認された。混成集団において、越夜集団に参加する時間帯は雌雄間で異なっており、メスはオスよりも遅く越夜場所に飛来し、オスよりも朝早く集団から離れていた。越夜に入ると雌雄ともに活動性は低下し、夜間の場所移動はほとんど見られず、交尾行動やメスをめぐるオス間の争いも確認されなかった。これらの結果は、メスはオスと同じ越夜場所に長時間滞在することを避けており、結果的に、同所的に越夜集団が形成されるのは、越夜に好適な場所が森林内でも限られているためだと考えられた。