| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-119 (Poster presentation)

ヤマトシロアリにおける初期コロニーと成熟コロニーの相互作用

北出理,*竹内智勇 茨城大学

ヤマトシロアリReticulitermes speratusのコロニーは雌雄の有翅生殖虫(王、女王)のペアにより創設される。交配で生まれた幼虫はワーカーやソルジャーに分化し、コロニーは数年をかけて個体数を増やしていく。本種と同属のR. hesperusでは、野外で成熟したコロニーの近傍に創設直後の初期コロニーを配置すると、初期コロニーの個体が殺されたという報告がある。野外でのコロニーの分布を考えあわせると、本属の初期コロニーは激しい種内競争にさらされていると考えられる。初期コロニーではワーカーやソルジャーの出現により、コロニーサイズやカスト構成が変化するが、この変化はコロニー間の相互作用に大きな影響を与える可能性がある。

本研究では、初期コロニーと成熟コロニーとの相互作用が、初期コロニーの成長にともなうカスト構成の変化により、どのように変わっていくのかを調べるため、成熟コロニー由来のワーカーグループを飼育する容器内に、構成個体が異なる初期コロニーを実験的に営巣させ、両者の相互作用を観察した。初期コロニーは発達段階にあわせてコロニーサイズやソルジャーの有無が異なる5タイプを準備した。

コロニーサイズが小さい場合、ソルジャーの有無にかかわらず、初期コロニー内の生殖虫は成熟コロニーの個体にすべて殺された。コロニーサイズが大きい場合、初期コロニーが生き残る場合があった。生殖虫が殺された初期コロニーでは、生き残ったワーカーが成熟コロニーに吸収され、部分的なコロニーの融合が起きるケースがみられた。一般化線形混合モデルへの当てはめとモデル選択の結果、初期コロニーの生殖虫の生存率は、ソルジャーの有無の影響を受けず、コロニーサイズが影響を与えることが分かった。


日本生態学会