| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-208 (Poster presentation)
ニセアカシアは北米原産のマメ科植物で日本に明治初期に導入された外来植物である。荒廃地の緑化や防災林に利用され、また蜜源植物や薪炭材としても有用な資源であることから日本各地で植栽されてきた。その中で野生化したニセアカシアは、その旺盛な繁殖力で生育地を拡大し、しばしば地域の群落構造を大きく変化させる要因の1つとなっている。これまでニセアカシアの生態や生理特性について様々な研究が行われ、その特徴が解明されつつある一方で、地域によっては分布状況などの基礎的な情報ですら明らかになっていない現状もある。世界自然遺産地域が位置する白神山地では、その周辺部にニセアカシアの生育が確認されているものの、これまで詳細な調査はほとんど行われていない。今後の分布変遷を明らかにし、さらに地域における動態予測を行う為にも現状の把握は重要である。そこで長期的なモニタリング体制の構築を念頭に、本研究では白神山地周辺におけるニセアカシアの分布状況および生育地特性について明らかにした。分布調査は白神山地の全周囲と主な河川、林道、登山道などを対象に自動車および徒歩による踏査を行い、ニセアカシアが観察された地点の位置情報、おおよその幹数等を記録した。得られたデータはGISを利用した解析に用い、土地利用の履歴や環境条件といった生育地特性の解明を行った。結果、2500地点以上のニセアカシア観察地点が記録され、そのほとんどが標高100m以下の白神山地周囲部に集中していた。またこれらは農地の周囲および耕作放棄地など、人為的な撹乱を経験していると思われる地点が圧倒的に多かった。今後、集団内および集団間の遺伝構造を明らかにし、集団の成立パタンや分布拡大経路の推定などを行う予定である。