| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-219 (Poster presentation)
ワラジムシ亜目は、落葉を直接食べることによって分解を促進する役割を担う、土壌動物の中でも数少ない落葉変換者である。日本では外来種を含め約150種が報告されており、浜辺から山岳地、都市環境も含む様々な環境に適応した種が生息し、外来種は人為的な環境、在来種は自然性の高い環境に生息するとされているが、各種の分布環境の制限要因については未解明な点が多く残されている。本研究ではワラジムシ亜目の分布の決定要因を明らかにすることを目的に、環境による分布種の違いについて野外調査するとともに、乾燥、水への耐性や餌選好性について室内実験を行った。調査の結果、合計9種のワラジムシ目種が確認され、これらは森林内のみに生息する種、森林外のみに生息する種、森林内外の広域に生息する種の3つに大別された。外来種は人為的環境を主な生息域としていたが、一部は孤立林内や林縁でも観察された。乾燥耐性試験では、外来種において0μlの条件でも1日以上生存可能な種が認められた。コナラ(樹木)、クズ(マメ科草本)、イヌムギ(イネ科草本)を餌とした選好性試験の結果、イヌムギは全ての種で好まれず、1)コナラとクズを好む種、2)クズをより好む種、3)コナラをより好む種、4)どの餌も好まない種の4つが観察された。以上の結果、どの餌も好まない種の存在と言う課題は残されるものの、ワラジムシ亜目の分布特性は、樹木と草本由来の餌に対する選択性の違いにより説明できる可能性が出てきた。また外来種であるオカダンゴムシが孤立林や林縁内に侵入しつつある事実が判明し、在来ダンゴムシ種との間に競争が起こることが懸念された。