| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-226 (Poster presentation)

市民調査による埼玉県爬虫類マップの作成

藤田 宏之/埼玉県立川の博物館

総合博物館である埼玉県立川の博物館では、2014年度夏休み企画展「ふしぎ・かっこいい埼玉と日本の爬虫類」において市民参加型企画として、一般市民などから公募した埼玉県全域の爬虫類の生息情報を基に、大型バナーの地図に生息記録地点プロットした「みんなでつくる埼玉県爬虫類マップ」を作成した。

生息情報の収集は、同年4月中旬よりチラシ、ポスター、webによる一般市民への発信をおこない、Eメール、館内の投書箱、郵便によって受付けた。また、博物館イベントの参加者に聞き取りもおこなった。さらに学校、行政、博物館等関係公共機関、埼玉県在住・出身の研究者、ナチュラリストにも働きかけ生息情報を収集した。展示期間中には埼玉県広報広聴課の協力を得、一般市民へSNSによる生息情報募集中の発信も実施した。

結果、過去生息が記録されている種全種の情報を得ることができ、特にニホンヤモリの都市部での生息情報は一般市民より数多く得られた。また、過去記録のなかった川口市でのシロマダラや横瀬町のタカチホヘビなど生息情報の得にくい種もマップに加えることができ、最新の埼玉県の爬虫類相が示すことができる企画となった。

爬虫類は、特にヘビ類は目にする機会も少なく、ルートセンサスなど調査で成果が得られにくい生物である。また、住宅地内のルートセンサスは一般市民の理解を得るのが難しいと考えられる。今回公募による情報収集によって数多くの住宅地内からのヤモリ・カナヘビの生息情報を得ることができ、さらに学校や公共機関からの聞き取りではヘビ類の生息情報を多く得られた。埼玉県の爬虫類相についてまとめた資料は、『埼玉県動物誌』での須甲(1978)以来存在せず、このような市民調査企画は爬虫類相の解明に有効と考える。さらに、都道府県単位でのレッドデータブック作成の基礎データにも活用可能と考える。


日本生態学会