| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-HS08 (Poster presentation)
「島根県の絶滅危惧㈼類に指定されている貴重なトンボで,“赤い妖精”と呼ばれるほど美しく愛らしいハッチョウトンボの大生息地が学校近郊にあることを知った。このトンボは,ひ弱で限定的な環境でしか生息できない。動きは比較的緩慢で,自力で長距離飛翔しそうにない。このトンボが,ある休耕田に3年前から出現した事実も知った。このトンボはこれまで長い年月にわたりどのように分布を広げ,どうやって生き残ることができたのか? その謎を解き明かすため調査を開始した。
2年間の生態基礎調査の結果,発生期間(消長)・個体の寿命(生存期間)・移動距離の知見を得た。そして今年度ついに,自力長距離飛翔しそうにないこのトンボが標高差60mの山を越え,直線にして460mもの長距離を移動した事実を突き止めた。私たちは「調査地から風に乗って山を越え休耕田へ移動した」との仮説を立て,装置を自作し,生きたトンボを使って実際に,風に対する飛翔行動の検証実験を行った。これらの調査結果と実験結果から,自力長距離飛翔できず限定的な環境でしか生息できないこのトンボが,強かに逞しく生き抜くための秘めた力と,生き残りを懸けた戦略について考察する。」