| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T07-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
従来の多くの根系研究では、掘り出した根の色や感触、太さをもとにその生死やフェノロジーを判別してきた。しかし、その判断には主観的な判断基準ゆえの個人差が生じてしまう可能性が高く、動態研究の不確定要素の一つとなっている。さらに、地中の根系をカメラやスキャナーで撮影する近年の非破壊計測法においても、土壌や有機物などの根系構造物と細根の色調の類似性は解析上の誤差要因であり、機能形質(根の硬さ、化学組成など)の評価といった新たなニーズも発生している。
このような研究手法上の課題を解き、炭素フローなどにリンクするような新たな知見の取得が期待される手法が分光反射画像法である。本手法では、人工光を照射した根からの反射を可視~短波長赤外の領域で多波長に分光し画像として撮影することで、肉眼で認識される色だけでなく、これまで可視化できなかった組織の発達程度や水分、有機物構成に密接に関係する反射情報を非破壊で客観的かつ面的に記録することができる。本講演では、樹木根を対象に(1)成長過程~生死のフェノロジー(2)成長―分解に関係した有機物変化、(3)呼吸活性に着目し、内外の研究事例を紹介しながら分光画像観測の応用可能性について考察する。さらに、野外観測を行うための有効波長の選定や近年の機材事情を紹介し、野外の生態学研究における分光画像計測の展開についても議論したい。