| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T08-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
ネオニコチノイド殺虫剤とは、1992年に登場したイミダクロプリドを初めとする、7種類の殺虫剤の総称である。使い勝手がよく、抵抗性の付いた害虫にも良く効くため、日本を含む世界中で幅広く使用されるようになった。本講演では、低毒性農薬の代表と言われたこの殺虫剤が、いまなぜ問題となっているのかについて基本的な解説を行い、科学的な議論に最低限必要となる「事実関係」を共有することを目的とする。
まず、この7種類の何がどれくらい、どのように使用されているのかについて概観する。また、ネオニコチノイド系農薬の特徴の一つである「浸透移行性」についても説明する。さらに、本田散布、育苗箱施用、無人ヘリコプター散布など、その使用用途によってどのように環境動態が異なり、その影響が異なるのかについて紹介する。
次に、ヒトや水生生物、ミツバチに対する毒性の特徴について、他の殺虫剤群との比較を行いながら整理する。ネオニコチノイド系殺虫剤の間でも毒性の特徴は異なっており、それらを一括りにすることの危険性も指摘する。また、現状の生態系保全に関する農薬規制の状況と、それに伴うネオニコチノイド系殺虫剤の生態リスク評価についても解説する。特に、毒性試験で使用される魚類、ミジンコ、緑藻という現状3種の試験生物に対する感受性の問題点を指摘する。最後に、このような事実関係を踏まえた上での今後の課題点等を整理する。