| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T08-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
演者のネオニコチノイド系殺虫剤(以下ネオニコ)との出会いは、80年代後半に遡る。販売流通する前の試験コードナンバーのimidacloprid(イミダと略す)を含むイネウンカ類の各種殺虫剤の害虫・益虫・ただの虫への影響評価を進めていた(日鷹と中筋 1990)。30年近くが経過し、イミダの他に複数の殺虫成分が開発・使用されている。ここでは、「農薬影響評価の指標へのアプローチ」を論点に、水田に立脚した農生物多様性に対する生態リスク評価について概観する。農多様性(日鷹 2010)とは、農業の種類そのものや農作業などの具体的な内容の多様性を指す。農薬の生態影響となると、どの種に悪影響が出るのか?という生物学的な多様性と農薬の関連性に、まず社会的関心は向きがちであり、EUにおけるセイヨウミツバチ問題は適例だろう。成分の殺虫活性・物理化学的な特性に多様性がある上に、使用現場が農業・農村であることにも留意して生態リスク評価を進めなければならない。同じ成分でも、施用方法、施用場所や時期、回数、混合される薬剤の調合、防除のターゲツト、防除技術関連の多様性もあれば、作物・土壌・水・天候条件などの圃場環境の多様性もある。また、生物多様性側もαβγの各レベル、生態系(景観)・種・遺伝子の多様性も合い重なり、多様な個体群や群集の時・空間動態に農薬が影響を与えている。以上の想定だけでも、「農薬の多様性×生物多様性」の組み合わせは、膨大な数字に登り、逐一リスクを精査するだけでは実際的ではない。生態リスク研究では、疫学的調査・野外実験・メソコズム・室内検定が行われてきたが、これら逆~順問題を相互補完的に組み合わせて指標軸を据える必要がある。では関連要素要因にどう着目すれば前向きなリスク評価への近道なのだろうか。(農多様性)×(生物多様性)を基軸に農薬インパクトのリスク評価を進めるべきかについて、留意すべき諸点を整理する。