| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T09-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

植物における共生者認識と表現型可塑性

*山尾僚(九大・理・生物)

動物と植物の相互作用は、食う食われる敵対関係だけでなく、互いに利益をもたらす共生関係も広く知られる。共生関係は、しばしば搾取者に利用されるため、これまでの研究の多くは、主に共生系の維持メカニズムに着目してきた。その一方で、なぜ共生関係が進化してきたのか?という根本的な問いについては見過ごされてきた傾向にある。共生系の進化を明らかにするためには、共生に関わる形質と同じ機能を果たす他の形質との違いを明らかにする必要がある。

植物は、植食者との長い相互作用の歴史の中で、毛やトゲによる物理的防御や有毒物質などによる化学的防御を進化させてきた。これらの防御に加えて、アリ類に蜜や脂質などの食物を提供することで、植食者を排除させる生物的防御を進化させた種も知られる。物理的防御や化学的防御を備えた植物が、なぜ生物的防御というアリ類との共生関係を進化させたのか?については未解明の課題である。本研究では、物理的・化学的防御とアリ類による生物的防御の効果を比較した。また、共生者の存在に応じた植物の表現型可塑性を解析する事で、各防御のコストを評価した。その結果、アリ類による生物的防御の効果は、他の防御よりも不安定であるが、そのコストは物理的・化学的防御に比べて低い事が示された。本講演では、これらの成果を紹介し、今後の展望について議論したい。


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