| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) D2-02 (Oral presentation)
従来ラン科植物は微細な種子を大量に生産し、それらを風に乗せて散布させることで、生存に必要な菌根菌と出会う確率を高めていると考えられてきた。一方、ラン科植物は実生が菌に寄生するという特徴が前適応となり、およそ200種が一生涯にわたって菌に寄生し完全に光合成をやめるという進化を遂げた。しかしながら、これら菌従属栄養植物は暗く風通しの悪い林床に生育しており、風による種子散布には適していないと言える。
そこで林床に生育しているにもかかわらず、液果をつけるラン科植物について、動物散布の可能性を疑い、種子散布様式を検討した。その結果、従属栄養性のラン科植物では、確かに動物に種子散布を託しているものも存在することが明らかになった。これらの研究は、世界で初めてのラン科における被食動物散布の報告である。菌に寄生し、小さな種子を風で散布する方法を採用したラン科でありながら、その寄生性を一生涯に延長することで、動物による種子散布を再獲得している種が存在することは、きわめて興味深い。