| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-03 (Oral presentation)

アカネズミの種子捕食がミズバショウ個体群に及ぼす影響

*冨士田 裕子・市川 秀雄(北大・FSC・植物園)

演者は1994年より、北海道石狩川河口のマクンベツ湿原、ニセコ丘陵地脚部の湧水湿地でミズバショウの個体群動態調査を続けてきた。その結果、両個体群では、開花に至るミズバショウのサイズや開花花序数、栄養繁殖への依存度、種子サイズ、実生の発芽時期など、様々な点で違いが存在することが明らかになった。一方、ニセコの調査地では、野ネズミによる種子の捕食が毎年観察されるが、石狩川河口のマクンベツ湿原のミズバショウ個体群は、地下水位が高くしばしば洪水の影響を受ける立地で、ネズミによる捕食はほとんど見られない。ネズミによる種子の捕食が個体群動態に影響する可能性があることから、ニセコのミズバショウ群落で、野ネズミの種子捕食状況について調査を行った。

野ネズミの調査は、ミズバショウ個体群調査方形区を含む50m×90mの範囲を10m格子の調査区とし、交点すべてにシャーマントラップを設置、連続3日間の調査を2006年から2008年の5月から10月まで毎月実施した。また、自動撮影カメラを設置しミズバショウ種子を捕食している野ネズミの特定を行った。さらに3m×3mの方形区を2ケ設置し、ネズミの捕食開始前の6月中旬から種子散布が終了する8月上旬まで、捕食の様子を花序ごとに記録した。

調査地には、アカネズミ、ヒメネズミ、ヤチネズミ、ムクゲネズミが生息していた。撮影記録等から、ミズバショウ種子を捕食していたのは、主にアカネズミと判明した。ネズミによる捕食は、果実が完熟する前から始まり、果実散布が終了する前に捕食のピークが見られた。ネズミは、調査方形区内の全果実の約15%から60%の種子を捕食し、その割合は年次変動していた。


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