| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) D2-07 (Oral presentation)
虫媒花と送粉昆虫の相互作用ネットワークである送粉共生系において、花蜜内にひそむ微生物の存在が注目されている。花蜜内に生育する酵母などの微生物は、単純な盗蜜者ではなく、植物および送粉者へ協力的に働きかけることで複雑な種間相互作用をもたらすことが報告されており、複合送粉共生系の存在が示唆されている。本研究では、植物の花蜜酵母の多様性を評価することで、花蜜酵母群集のネットワーク構造、さらには微生物-訪花昆虫-植物の複合送粉共生系の全体像の解明を試みる。
菅平高原の半自然草原に生育する虫媒花14種を対象に、花蜜内に含まれる酵母(真菌)をメタバーコーディングで同定したところ、計39種類の真菌(子嚢菌門6属34 種類、担子菌門4属5種類)のOTUが検出された。真菌群集内では、花蜜酵母として有名なMetschinikowia属が優占しており、最も多くのホスト植物種から検出されたM. reukaufiiについては,株の単離にも成功した。植物種と花蜜真菌群集の共生関係に基づくネットワーク構造は、ホスト植物の送粉者タイプに対応しており、マルハナバチ媒花の植物種がネットワークのコアを形成していた。以上のことから、微生物-訪花昆虫-植物の複合送粉共生系ネットワークが存在することが明らかになった。