| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-09 (Oral presentation)

外来植物セイタカアワダチソウの抵抗性の進化の時間的な動態

*坂田ゆず(京大・生態研),Timothy Craig, Joanne Itami (Univ. Minnesota), 山崎理正(京大院・農),大串隆之(京大・生態研)

生物間の相互作用は環境要因の地理的な違いに応じて変化するため、生物の形質に対して同種の集団間でも異なる選択圧が働き、多様な形質が進化する。外来生物は、侵入の歴史が分かっていることが多いため、形質の進化を追跡できる理想的な材料である。

本研究では、北米から日本に100年前に侵入し、全国に分布しているセイタカアワダチソウ(以下セイタカ)と、北米から日本に15年前に侵入し、セイタカに重度な食害をもたらしているアワダチソウグンバイ(以下グンバイ)を材料に用いた。セイタカのグンバイへの抵抗性の進化の時間的な動態と、抵抗性の変異を生み出すグンバイの密度を決める環境要因を明らかにするために、日米におけるグンバイの密度とセイタカの抵抗性の地理的変異、および日米間のグンバイの密度を決める要因の解明を行った。

日米のいずれも、年間平均気温が高く、他の植食者による葉食害が小さいほどグンバイの密度が高かった。さらに、グンバイの密度が高いセイタカの集団では、密度が低い集団に比べて抵抗性が高かった。また、日本の起源集団である北米南部のセイタカでは、高い抵抗性が見られた。北米では、多様な分類群の植食性昆虫が見られた一方で、日本では植食性昆虫の種数は少ないが、グンバイの密度は高かった。以上により、セイタカは日本に侵入することでグンバイから解放され、抵抗性が一旦は低下したが、グンバイと再会することで再び上昇したという時間的な動態が示された。また、日本では、北米に比べて気候条件が好適で、グンバイの競争者となる葉食者が少ないことにより、グンバイの密度が高く、セイタカに与える選択圧が強くなり、短期間の内にセイタカの抵抗性が上昇したことが示唆された。


日本生態学会