| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-11 (Oral presentation)

匂による植物の血縁認識の進化を考える

*塩尻かおり, 上杉あかね, Andre Kessler

植物は食害・病気等のストレスを受けると、それに反応して様々な性質を変化させる(誘導反応)。この誘導反応の一つに、匂いの変化がある。「匂い」を構成する分子は揮発性であるため、離れた場所にいる様々な生物が利用できる情報となり得る。誘導反応によって変化した匂いは、これまでに植食者を寄せ付けない、植食者の天敵を誘引する、病気の侵入を防ぐ等、匂いを放出する植物側の適応的な意義が議論されてきた。ここで興味深い点は、匂いは、いったん大気中に放出されると、受信者側にその情報を利用するか否かの選択権が委ねられる、という点である。従って上記のような「文脈」以外でも、様々な生物が匂いを情報として利用しうる。例えば、近隣にいる他の植物が、食害・病気等のストレスを受けた植物由来の匂い情報を受容し、前もって誘導反応を始める場合が報告されてきている。

演者らは、この「被害植物-健全植物間の匂いコミュニケーション(以下、植物間コミュニケーションと略)」についてセージブラシとセイタカアワダチソウを用いて研究を行ってきた。これまでに、匂いが個体ごとに異なり、遺伝的に近い個体で匂いが類似すること、また、遺伝的に近い個体の匂いを受容する方が、遺伝的に遠い個体の匂いを受容した場合よりも、抵抗性が高まることを明らかにしてきた。つまり、受容する植物が血縁の匂いを認識していると考えられる。この植物による匂い認識が、どのように進化してきたのかを明らかにするため、セイタカアワダチソウにおいて、被食圧の高い個体群と、被食圧の低い個体群を用いて、匂いによる血縁認識の違いを調べた。その結果、被食圧の低い個体群では、血縁認識するのに対し、被食圧の高い個体群では血縁認識していないことがあきらかになった。


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