| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-04 (Oral presentation)

テリハボクの初期成長特性における家系間差:母樹の生育環境による早生型・晩生型は存在するか?

松下通也, 花岡 創, 加藤一隆, 板鼻直榮, 楠城時彦, 千吉良 治 (森林総研・林育セ)

植物の成長パターンは、風衝地では矮性化するなど、産地や生育地の環境によって大きく変化することが知られている。例えばスギでは、地理的な傾向として太平洋側は早生型、日本海側は晩生型の成長曲線のパターンを示し、日照量や夏季の降水量などの気候因子と生育初期の成長速度との相関が報告されている。島嶼の海岸域は強い風や波にさらされる特異な生育環境であり、海岸植物群落を構成する樹種では、そのような環境に適応して矮性化や樹幹形状比の変化といった成長特性の変異を示す場合がある。本研究では、海流散布樹木テリハボク(Calophyllum inophyllum)を対象として樹高成長曲線を解析し、成長パターンにおける早生型・晩生型の産地間・家系間の変異が存在するのか検証した。先島諸島・大東諸島の8島に生育する母樹より自然交配種子を収集し、西表島内の試験地に植栽した苗木の樹高を約半年おきに測定した。ゴンペルツ曲線によって樹高成長パターンを解析した結果、初期勾配のパラメータrと飽和パラメータKに家系間の変異が認められた。さらにパラメータrKの間にトレードオフ関係が認められ、このことは早生型の成長パターンを示す家系と、晩生型の家系が存在することを示唆すると考えられる。本発表では、母樹の生育環境(海岸線からの距離や卓越風の強度など)と、樹高成長パターンとの関係性についてさらに検討する。


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