| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-08 (Oral presentation)
同種同齢の森林の林分呼吸量(葉+材部)の林分発達に伴う変化は単一ではなく、3通りの変化がある。すなわち、(1) 絶えず増加し続ける(Kira and Shidei 1967, Odum 1969)、(2)林分閉鎖後一定となる(大畠・四手井 1974, Ogawa et al. 2010)、(3)一山型の変化、つまり、林分閉鎖後、減少する(Ryan et al. 1997, Drake et al.2011)。
これら3つの傾向は数少ない森林の林分呼吸量のデータに基づいて提案された仮説で、仮説(1)は重量ベースの呼吸速度の一定性、(2)は表面積ベースの呼吸速度の一定性、(3)は重量ベースの呼吸速度の低下を仮定すればある程度まで説明可能であるが、十分ではないと思われる。
そこで、本研究では林分動態に関する仮定と林木個体の呼吸に関する仮定を設定することにより、林分呼吸量の経年変化に関するモデルを作成し、統一論的に考えてみた。ここで、仮定は以下の3つで、それぞれ、[1] 林冠閉鎖後、自己間引き則(Yoda et al. 1963, Enquist et al. 1998)の成立、 [2] 平均の個体年呼吸量と平均個体重とのサイズ依存則(スケーリング則)の成立(cf. 穂積研グループ)、[3] 林分密度の経年変化はある種のロジスティック式に従う(Ogawa 2012)、である。
本モデル解析により、上述の3つの仮説は、数学的場合分けにより理論的に存在することが証明され,特に仮説(2)の一定性は特異的な場合で、密度の関数は限定されなかった。また、このモデル解析結果を考慮すると、先行研究で報告したヒノキ林における林分呼吸量の変化は一定性(Ogawa et al. 1985)のほかにも、減少傾向にもあると判断された。