| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-09 (Oral presentation)

ブナにおける稚樹と親木のハビタットの違いに基づく更新適域の時空間変動予測

*小出大 (国環研), 比嘉基紀 (高知大), 中尾勝洋, 大橋春香, 津山幾太郎, 松井哲哉, 田中信行 (森林総研)

広域スケールで樹木の更新適地となる気候条件を解析することは、気候変動が樹木種に与える影響を明らかにし、その適応策を構築する上で重要な意味を持つ。本研究ではsize-based species distribution model (SBSDM)を構築することによって、親木の分布する生育適域とは別に稚樹が分布する更新適域の時空間的な変化を予測した。日本の冷温帯を代表するブナ(Fagus crenata)を対象種とし、 (1)親木&稚樹、(2)親木のみ、(3)稚樹のみ、(4)分布なし、の4種類の潜在分布域を現在と将来で予測した。ブナの分布データとして植物社会学的ルルベデータベースを用い、将来気候は24のGCMを用いた。さらに2011年から2099年まで、4つの代表的なGCMを用いて10年ごとに稚樹(親木&稚樹と稚樹のみ)の潜在分布域を予測し、更新適域が消失する時期を予測した。

SBSDMは親木・稚樹とも適切に分布を説明でき、ブナ稚樹が親木に比べて多雪な環境に多く出現するというサイズによるハビタットの違いも表現できていた。親木&稚樹と親木のみの潜在分布域は今世紀末に向けて分布が縮小することが予測された。しかし稚樹のみの潜在分布域は雪が多い地域の温暖な場所においてむしろ増加すると予測された。これはブナの更新を促進する雪が多い多雪地では、温暖化による更新適域の減少がある程度食い止められるため、稚樹のみの潜在分布域が広がったと推察された。更新適域は、温暖で雪の少ない場所から減少が始まり、2060年代頃と今世紀末に気温の急上昇に伴って大きく減少することが予測された。


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