| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-11 (Oral presentation)
2011年3月11日の東日本大震災による津波は福島県沿岸に大きな被害を及ぼした。津波は人々の生活や生物多様性を破壊し、さらに、福島第一原発の事故によって、生物の生息環境は危険にさらされている。このように津波の被害を受けた環境で、昆虫たちはどのように復活するのだろうか?このことを明らかにするため、震災前から水生昆虫を調査していた福島県沿岸の沼で、震災後の水生昆虫の変化について調査を行った。調査地は相馬市松川浦にある津波の被害を受けた淡水の沼(面積約260㎡、深さ約60㎝)である。この沼には、2008年から2010年までの調査で、18種類(4目8科)の水生昆虫が確認されている。中でも、ネアカヨシヤンマやアオヤンマ、ヤブヤンマ、カトリヤンマといったヤンマ類の幼虫が非常に多いのが特徴であった。演者らは震災23日後の2011年4月3日から当地を訪れ、定量調査を行いながら水生昆虫相の推移を調査した。その結果、震災後ヤンマ類幼虫は激減し、その代わりに震災前には確認されていなかったミゾナシミズムシやコマツモムシ、マメゲンゴロウ、コツブゲンゴロウなど小型の水生昆虫が年々増加し、2014年には30種を超えた。このことは、上位捕食者であるヤンマ類幼虫の減少や沼の周囲にあったクロマツの枯死による環境変化など様々な要因が関与していると推察される。沼の環境はこれからも変化すると考えられることから、水生昆虫相についても調査を継続し、その推移を明らかにしたい。