| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F3-33 (Oral presentation)

植食動物および肉食動物の生物量を具体的に予測する新食物網数理モデルから予測される諸現象と諸関係

*今野浩太郎(農業生物資源研究所)

従来の食物網数理モデルでは植食・肉食動物の量は物理的に具体性の無い個体数として、捕食も個体の消失など点的に扱われ、空間や摂食・探索・捕食行動の定義も物理量的に曖昧であった。演者は単位生態系体積内に存在する植物・植食者・肉食者の各栄養段階集合中の物質(タンパク)量(kg/m3の物理単位)の捕食・被食・呼吸による流れの収支が0となる収束平衡点を求め単位生態系体積に存在する植食・肉食者の物理単位付生物量h,cを予測する数理モデルを考案した。本モデルは空間、摂食速度、栄養価、探索効率他生態因子全部を物理単位付量として扱う徹底的にParameterizeしたモデルであるゆえ具体的な生物量予測と以下の定量・現実的諸現象の説明ができた。①昆虫が植食者の森林生態系では植食・肉食者の現存量は100mg湿体重/m2程度で共に低く植物被植率も年間数%程度。②サバンナ生態系(植食者ヌー等、肉食者ライオン)では植食・肉食者の現存量は各7000mg、26mg湿体重/m2(35頭、0.13頭/km2)で植食者量が多く植物年間被食率も高い(65%)。③(ギルド内捕食存在下で)植物の栄養価が低い(高い)と肉食・植食者とも減少(増加)する。タンニン等量的防御は野外で植物防御機能あり。④肉食者の探索効率が高いと植食・肉食者とも減少。⑤ ③④が満たされる地上生態系では地中・水中生態系に比べ動物量が少ない。⑥内的増殖率が高い昆虫等が植食者の森林生態系等では植食者より肉食者の量が多い逆三角の食物網が出現しうる。⑦局所的に植物の栄養価が高い(低い)とそこでの植食者量と植物被食率は広域的に栄養価が高い(低い)場合より顕著に高い(低い)。これより誘導防御の効果や土用芽(局所的な新芽)の高被食率等が理解可能。文献Konno K(2016)Ecological Monographs (in press).


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