| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-13 (Oral presentation)

タンチョウのつがいダンスと繁殖との関係

*武田浩平,沓掛展之(総研大・先導研)

つがいダンスを行う鳥類は、ツルの仲間をはじめ、何年にもわたって、長期の関係を築く一夫一妻であり、両性が子育てに多大なコストをかける傾向にある。このことから、ダンスの機能はつがいの絆(pair-bond)を強め、交尾や子育てを成功させるためと考えられてきた(つがいの絆仮説)。しかし、ダンスの特徴と繁殖成功との関係は調べられておらず、この仮説は推測に留まっている。そこで、私は、タンチョウ(Grus japonensis)のつがいダンスを対象に、情報理論(エントロピー)に基づいて、ダンスの特徴を定量化した。そして、繁殖成功との関係性を調べた。

その結果、1)自身の行動要素は相手の行動要素に反応し、ダンスの特徴(行動要素の多様性)がつがい内で正に相関していた。2)個体ごとに分けた特徴ではなく、つがいごとの合わせた特徴が、繁殖成功との関係を示していた。3)ダンスの内容が子育ての成功に関係し、つがいごとのダンスの特徴(つがい内の同調性/依存性)が繁殖成功と負の相関を示していた。

1)と2)の結果はつがいの絆仮説を支持していた。しかし、3)の結果は、ダンスの特徴が繁殖に負の影響を与えているため、つがいの絆仮説を支持していない。このことは、「つがいの絆」という概念の曖昧さに由来する可能性があり、この仮説を再考する必要性を示唆している。例えば、ダンスは、つがいが絆を維持する努力ではなく、絆を形成する努力にのみ、関係している可能性がある。本研究の成果は、動物における、双方向で行われる複雑なコミュケーションの理解に寄与する。


日本生態学会