| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-19 (Oral presentation)
動物は捕食を回避するために様々な色彩を進化させている。「警告色」はそのひとつで、派手な色彩で自らの毒性を捕食者に誇示し、攻撃を躊躇させる適応である。蛾の一種であるヨツボシホソバには、色彩に興味深い性的二型が認められる。オスの翅は灰色であるが、メスの翅は黄色地に黒い斑点があり警告的な色彩をしている。そこで本研究では、本種の雌雄での色彩の二型とその毒性との関連性を明らかにするために捕食者への提示実験をおこなった。捕食者であるシジュウカラにヨツボシホソバのオスあるいはメスを連続で3回提示し、試行を繰り返すごとに捕食行動がどのように変化するのかを検討した。オスを与えた実験では、シジュウカラは2度の捕食経験の後に攻撃を躊躇するようになった。一方、メスを与えた実験では、シジュウカラは1度の捕食経験によって攻撃を躊躇するように学習した。無毒で灰色のハチノスツヅリガを与えた対象実験では、試行回数を重ねてもシジュウカラの捕食行動に変化はみられなかった。これらの結果から、ヨツボシホソバのメスは不味く、派手な色彩を呈することで捕食者の学習を促していると考えられる。本研究から色彩の性的二型の進化を駆動する要因のひとつとして警告色のはたらきの違いが示唆された。