| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-21 (Oral presentation)
時空間的に変動する温度環境に対する生物の応答を理解するうえで、温度適応機構の理解は重要である。熱帯においては、気温が高温に達しやすいため、高温環境を行動的に忌避し、過剰な体温上昇を防ぐことは外温性動物において重要な適応的応答である。キューバには、系統的に近縁であるにもかかわらず、異なる温度環境への適応を可能にしたアノールトカゲ(Anolis allogus, A. homolechis, A. sagrei)が生息している。これらのトカゲは、野外において異なる体温を行動的に維持しており、温度適応における高温忌避行動とそれに関連する遺伝的基盤の重要性を検証するうえで非常に有用である。そこで本研究では、これら3種の高温に対する行動的な応答を比較した。高温忌避行動の遺伝的基盤として、生体の熱センサーを担う温度感受性Transient Receptor Potential ion channel (TRP) に注目し、先行研究から高温忌避行動との関連が示唆されているTRPA1の温度感受性を3種で比較した。その結果、森林内の低温環境に生息するA. allogusは、高温の環境に生息するA. homolechisおよびA. sagreiよりも忌避行動を引き起こす温度とTRPA1の反応温度が有意に低かった。このことは、温度に対する行動の感受性とそれに関連する分子の感受性は、異なる温度環境への適応に重要な形質であることを示唆している。