| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-24 (Oral presentation)
河川汽水域に生息する底生生物は干潟や転石帯、塩性湿地など環境傾度の多様な場に適応し生息している。河川汽水域の環境傾度は河川水や波浪、潮汐といった外力のバランスによって成り立つことから、流域特性(河川の流入する陸域・海域に起因する環境特性)が、汽水性底生生物の生息場を規定している可能性は高い。つまり、汽水性生物の分布は流域特性に間接的に影響を受け、ひいては各水系の流域特性の相違が、底生生物の種多様性を左右していると考えられる。そこで本研究では、河口域に生息するカニ類の分布と流域特性との関係性の解明、および種多様性と流域特性との関係性の解明を試みる。底生生物の中でも特にカニ類は汽水域に形成される多様な環境に適応している。そのためカニ類は本研究において適当な材料である。調査地は九州を対象とした。九州は日本海、瀬戸内海、太平洋、有明海、東シナ海など、様々な海域に面するだけでなく、大小様々な規模の河川が流入する。つまり、九州の流域特性は多様であり、本研究を達成する上で理想的な調査地であると考えられる。2014年5月から2015年12月までの間に約140水系の河口域で現地調査を実施し、各水系のカニ類相データを集積した。現在、少なくとも54種のカニ類が確認された。各カニ類に着目すると、出現の多い種では133水系確認され、少ない種では1水系のみであった。また、水系ごとに出現したカニ類の種数は6種から35種と様々であった。そして、各種の分布と流域特性との関係性に着目すると、流域特性によって分布が左右される種、左右されない種など、種によって分布特性が異なることが示唆された。また、カニ類の種多様性と流域特性の関係性は本発表を持って示したい。