| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-01 (Oral presentation)

メダカ属魚類における体色の多様化をもたらす生理生態メカニズム(I)

*藤本真悟(琉球大・熱生研),持田浩治(慶応大・生物),杉内信哉,松井久実(麻布大・獣医),北野潤(遺伝研・生態遺伝),D. F. Mokodongan(琉球大・理),石川麻乃(遺伝研・生態遺伝),R. K. Hadiaty(LIPI),A. K. W. Masengi(Sam Ratulangi Univ.),山平寿智(琉球大・熱生研)

メダカ属は性的二型が顕著な分類群であり、オスの二次性徴形質は種間で変異が大きく鮮やかな体色を示す種が多い。体色の種間変異をもたらす生理生態メカニズムの一端を明らかにするため、体色の多様化が著しいインドネシア・スラウェシ島南東部に固有なOryzias woworae 種群に着目した。これらのオスはいずれも二次性徴形質として体と鰭に赤色を発色するが、その度合いは種間で異なる。オスの赤色の体色はカロテノイドを用いた求愛シグナルであると仮説を立て、赤色の発色が弱いO. asinuaと赤色を強く発色するO. woworaeを用いて以下の検証を行った。まず、野生個体の赤色部分に含まれるカロテノイド組成を分析したところ、キサントフィル類エステル体を主成分とし、その他に数種の遊離型キサントフィルとカロテンを有していた。また、O. woworaeのオスは体組織にこれらのカロテノイドを多く蓄積しており、赤色の発色がカロテノイドの蓄積量に依存して変化することを示唆する。次に、それぞれの種のメスが同種のオスに選好性を示すかを二者択一の行動観察で確認した。O. asinua のメスは同種のオスにもO. woworae のオスにもほぼ同じ時間滞在した。これに対して、O. woworae のメスは同種のオスに滞在する時間がより長かった。これらの結果は、O. woworae 種群における赤い体色は、カロテノイドを用いたオスの求愛シグナルとメスの配偶者選好性の共進化を通じて多様化したことを示唆する。


日本生態学会