| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-05 (Oral presentation)

小笠原諸島に侵入したグリーンアノールの進化的変化の検出と集団ゲノム解析

*玉手智史(東北大・院・生命), 森英章(自然環境研究センター), Brian J. Composano (University of Florida), Kenneth L Krysko (University of Florida), 舟山亮(東北大・医・附属創生応用医学研究センター がん医学コアセンター 細胞増殖制御分野), 中山啓子(東北大・医・附属創生応用医学研究センター がん医学コアセンター 細胞増殖制御分野), 牧野能士(東北大・院・生命), 河田雅圭(東北大・院・生命)

外来種の侵入・定着による新規環境への適応や分布変動は進化生物学において短期的な適応進化の実験場として近年注目を集めている。外来種の拡大と定着成功には可塑性あるいは進化的変化による応答が重要だが、創始者集団はボトルネック効果により著しく遺伝的多様性を欠くため遺伝的変化を伴う進化の効果は過小評価されてきた。一般に、創始者集団内の遺伝的多様性は導入サイズや侵入回数に影響されることが知られているが、これまで外来種において創始者及び現在の集団内の遺伝的多様性や導入時期の推定を行った研究はない。そこで本研究は、小笠原諸島に侵入したグリーンアノールと移入元と推定されている北米集団を用いて、侵入後の形態変化とゲノム配列を用いた集団動態の推定及び定着過程で自然選択を受けたゲノム領域の検出を行った。その結果、小笠原移入時および現在の有効集団サイズは28および229と推定された。また、小笠原で有意に正の自然選択をうけ、北米集団と有意に分化したと思われるゲノム領域をコアレッセントシミュレーションにより推定した。その結果、12の領域が検出され、そのうち6つは筋肉量や運動能力を向上させる複数の遺伝子であることから、後肢長の変化に伴い生じた急速な進化が侵入後の短期的な拡大に寄与したと考えられる。


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