| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-09 (Oral presentation)

密度依存的な推移行列と弾力性:寄生蜂2種の競争実験

*嶋田正和,長瀬泰子,小林祐一郎 (東大・総合文化・広域)

寄生蜂Anisopteromalus quinariusは、同胞種A. calandrae(ゾウムシコガネコバチ)とは別種として記載された(Baur et al, 2014)。A. calandraeと比べて体サイズは2~3倍大きく、宿主アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシへの匂いによる選択産卵学習はできない。また、A. quinariusはハチミツ給餌の有無で成虫生存率・繁殖力が極端に変化する表現型可塑性を示すが、A. calandraeは自ら宿主を吸汁するので変化しない。

これら近縁2種を用いて、実験系で種内競争(雌2匹)と種間競争(両種とも雌1匹ずつ)で日毎の繁殖力と生存率をハチミツ給餌下で3週間測定した。種内と種間の競争条件下で日毎の生存率・繁殖力をLeslie推移行列に組み、各要素の固有値に対する弾力性elasticity(相対寄与) を分析した。その結果、A. quinariusは、種内競争下ではA. calandraeと同じだけの適応度を発揮したが(2♀の次世代生産数=約120匹ずつで同等)、種間競争下では繁殖力がA. calandraeの約60%程度しか発揮できず(1♀の次世代生産数A.c.=約80匹、A.q.=約48匹)、適応度は大きく低下した。推移行列からの内的自然増加率λも小さかった。Gokhman et al. (1999)によりA. calandraer選択種、A. quinariusK選択種と報告されたが、今回の種内・種間の競争置換実験では、A. quinariusは競争力も低く、同所的にはA. calandraeからの競争的排除による消滅が示唆される。


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