| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) H2-20 (Oral presentation)
特定外来生物オオクチバスは主として止水環境を生息・繁殖場所とする。流水環境である河川に人工的に造られた止水環境であるダム貯水池は、オオクチバスを増殖させ、それを河川環境へと拡散させるおそれがあることから、オオクチバスの増殖をいかに抑えるかはダム貯水池の管理上、重要な課題となりうる。
我が国では多くのダム貯水池においては、梅雨や台風などによる増水への対策として、梅雨入り前に貯水位を低下させる管理が採用されている。この時期がちょうどオオクチバスの繁殖期と重なる点に注目して、福島県の三春ダム貯水池(さくら湖)では、オオクチバスのオス親魚による産卵床の形成を促進するための水位安定期を複数回含めて段階的に貯水位を低下させた結果、産卵床を効果的に干出させることに成功した。さらに、網場やポンプ施設に人工産卵装置を設置したところ、貯水位の低下が完了した後に産卵床の形成が誘導され、人工産卵装置の設置が段階式の水位低下を補完する繁殖抑制手法として位置づけられた。
一方、年間を通して水位をほぼ一定に管理するダム貯水池もあり、岡山県の苫田ダム貯水池(奥津湖)では、オオクチバスの産卵床形成に適した複数の条件に基づいて湖岸環境の繁殖ポテンシャルマップを作成した結果、約4%の湖岸が高ポテンシャル区域として抽出され、自然産卵床の形成の大部分がこの区域に集中することがわかった。そこで、産卵床破壊や成魚個体の捕獲、人工産卵装置の設置など生息抑制のための努力を、高ポテンシャル区域に集中させて継続している。この水域において、オオクチバスは減少傾向にあり、現在、メス親魚を効果的に誘引するフェロモン・トラップの設置試験のための準備が行われている。