| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) H3-28 (Oral presentation)
【背景】大きさや化学成分などの種子形質には,種内のみならず同一樹木個体内においてもしばしば著しい変異が認められる.近年このような個体内変異が植物の繁殖や生存に及ぼす影響を解明することの重要性が指摘されているが,これまで種子形質の個体内変異が解析対象とされることは少なかった.そこで,コナラQuercus serrataを対象として,種子サイズとタンニン含有率の種内変異について,個体間変異と個体内変異の相対的重要性,および個体内変異の傾向の年次変化について検討を行った.【方法】岩手大学滝沢演習林内に設定した固定プロットにおいて,シードトラップを用いてコナラ種子を回収した.対象とする母樹数は,2007-8年は34本,2009年からは13本である.健全堅果のみを解析対象とし,種子生重を計測後,子葉部のタンニン含有率をradial diffusion法によって測定した.但し,2007年のサンプルについては,近赤外分光法による検量モデルを用いてタンニン含有率を推定した.【結果・考察】種子形質には,著しい変異が認められた.例えば,2007年サンプル(n = 9378)に関しては,種子サイズの範囲は0.1-4.5g(平均2.1g,変動係数26.5%),タンニン含有率の範囲は0.1-34.5%(平均6.3%,変動係数35.8%)であった.また,種内変異の大部分が個体内変異に由来していることが判明した(種子サイズ,個体間変異25.1%,個体内変異74.9%;タンニン含有率,個体間変異16.4%,個体内変異83.6%).この傾向は翌年以降も維持されたが,年によって個体間変異と個体内変異の相対的重要性には変化が見られた.また,各樹木個体の種子形質の平均値および変動係数の順位は,年が変わっても維持される傾向が認められた.