| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) H3-31 (Oral presentation)
クローナル植物集団は複数の遺伝的に同一なラメットにより構成されている。この構造は、ジェネットがクローン成長により繰り返し新たなラメットを集団中に加入することで維持されている。しかし、ジェネット同士が複雑に入り組んでいたり、地下部でクローン成長が行われる場合、ラメット間の系譜やラメットのクローン成長確率などクローン成長の動態を把握することは難しい。
本研究では、地下茎でクローン成長するスズラン (Convallaria keiskei) を対象に、地下茎でのラメットの連結からジェネットのクローン成長(栄養繁殖)についての推移行列モデルを構築し、ジェネットと集団の動態を調べることを目的とした。遺伝子型を特定したラメットの地上部の動態を経年追跡調査し、3年以上経過した後に地下茎を掘り起こして、クローナル断片ごとにラメット間の連結と新芽の形成について調査した。そのデータを元に、各ラメットを葉数、葉長、断片の先端(か否)についてステージ分けし、ジェネットごとの推移行列を構築した。その結果、断片の先端にありその年に生産されたラメットほどクローン成長する確率が高いことがわかった。葉長や葉数はあまり影響を与えなかった。また、推移確率やラメット生産頻度は集団中に優占するジェネット間で異なっていることが明らかとなった。したがって、有性繁殖同様にクローン成長頻度はジェネット間で異なり、これらのクローン成長動態が集団内でのジェネットの優占度に影響していると考えられる。