| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-34 (Oral presentation)

南三陸町における里山・里海の資源管理をめぐる新たな動向

*深町加津枝(京大院・地球環境), 計彬嫻(京大院・地球環境)

宮城県南三陸町は行政区のほとんどが分水嶺で区切られ、森・里・海のつながりの中で、豊かな自然環境と多様な地域文化が形成されてきた。しかし、2011年の東日本大震災やその後の復興事業は、地域の自然や文化を大きく変貌させるものとなっている。震災後に策定された「南三陸町震災復興計画」では、「自然と共生するまちづくり」を基本理念の一つに掲げている。また、南三陸町バイオマス産業都市構想(2013年)では、バイオマス資源の収集から製造・利用まで一貫した自立分散型社会システムの構築を目指している。

震災復興を進める中で、様々な主体が参加する事業実施体制も生まれ、このような連携の枠組みが、2015年11月の「南三陸杉」のブランド力向上に向けたFSC(FM認証及びCOC認証)の取得などの原動力となっている。カキの養殖イカダの数を削減して質の改善、環境負荷の軽減を図り、ASC認証を取得する準備も進んでいる。森・里・海のつながりを活かし、自然資源を持続的に利用することでの、新たな商品開発、「南三陸」ブランドの発信に重点が置かれるようになった。

また、2015年3月に南三陸金華山国定公園が「三陸復興国立公園」に編入され、エコツーリズムの推進、「みちのく潮風トレイル」の設定が進められている。南三陸町自然環境活用センター(南三陸ネイチャーセンター)の再建に向けた準備室や友の会の活動、「フィールドミュージアム」の整備(環境省)は、自然体験などの場や機会を提供し、自然を生かした交流人口の増加や地域活性化に向けた取り組みとして期待される。

本報告では、以上のような2011年以降の南三陸町における里山・里海の資源利用、管理をめぐる新たな動向について、関係者への聞き取り調査、現地調査、資料分析に基づいて考察する。また、自然資源のブランド化に向けた戦略や対象となる生態系の特徴、今後の課題を整理する。


日本生態学会