| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) I2-17 (Oral presentation)
ダムからの土砂供給によるアユへの効果として,餌となる付着藻類の剥離や遷移の更新による餌の質の向上が着目されてきたが,土砂の堆積によるアユの餌の量の減少については検討されてこなかった。餌量の減少についても評価を行うことで,許容される土砂の堆積量の目安が得られ,適正な土砂の供給量の検討に役立つことが期待される。
そこで,本研究では河床の石を対象に,基質となる土砂から露出している高さ(露出高)とアユの摂食痕(食み跡)の有無およびその高さ(食み跡高)との関連について複数河川で調べ,河床への土砂の堆積がアユの摂食に及ぼす影響を検証した。
その結果,石の露出高によって食み跡の有無が異なり,露出高が小さい石では食み跡の無い石が多かった。また,石の露出高が小さいほど食み跡高も小さくなり,露出高が大きい時には摂食されなかった河床近傍まで食み跡が見られた。
これらの結果は,過剰な土砂の堆積によってアユの餌利用可能性が制限されることを示唆している。したがって,人為的な土砂供給によるアユへの効果・影響を考慮する際には,付着藻類の剥離による餌の質の向上だけでなく,餌の量の減少についても着目する必要があると考えられる。