| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) I2-19 (Oral presentation)
かつての「緑化」は牧草を主体とした植生で法面などの撹乱跡地を被覆することを指していた。しかし、近年になり遺伝的撹乱の影響をできるだけ排除するために、地域性苗木の植栽などが検討され始めている。さらに発展させて、北海道大学の中川研究林内に現在建設中の国道40号音威子府バイパスの一部の法面では、より確実に元の森林に復元する工法として森林表土をブロック状に切り取り、新たに発生する盛土法面に貼付ける方法=表土ブロック移植の実用化に向けた試験を行っている。この表土ブロック移植は、森林の表土に含まれる植物の根、種子、土壌動物、土壌微生物を腐植に富む表土とともに移植するものである。植物の根系成長が停止する2013年10月に7m x 7mの表土ブロック区とすき取り土(対照)区をひとつのセットとし、4セットを設置した。移植前として2012年と2013年に移植元を、さらに移植後として2014年と2015年に試験地を調査した。この調査では植物群落、土壌動物群集、土壌成分、表土ブロック形状維持状況を評価したので、ここで報告する。表土ブロック移植はある建設現場では既に事業化されていたが、ブロック移植の経費が高価で、またその評価も定まっておらず、普及には至らなかった。そこで、本試験では、既存の建設機器(バックホウ)を使用して、誰にでも表土ブロック移植が可能な方法を目指した。さらに、短期・中期的な調査も予定にしており、森林復元の適正な評価方法も検討している。以上のように、生態学的な評価も含めた法面の森林復元の工法の確立を目指している。