| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) I2-22 (Oral presentation)
モンゴルの半乾燥草原では生物多様性消失が進行しており、この消失はさらに生態系機能の低下も招く恐れがある。これまでの生物多様性-生態系機能に関する実験研究は、種の消失がランダムに起こることを仮定しているが、現実の生態系ではノンランダムな種の消失が起こっている。そこで本研究では、ノンランダムな種の消失を野外操作実験で再現し、植物群集における種多様性がどのように複数の生態系機能に影響するのかを明らかにすることを目的とした。
2013年の夏に、実験サイトをモンゴル国フスタイ国立公園に設置している。その実験サイト内に3m四方のプロットを機械的に80個設置し、各プロット内で全出現種の密度を測定した。得られた密度データを用いて種の相対優占度を算出し、優占種を特定した後、各プロットにおける種数と優占種の密度のデータから、操作する種数(12→1種)を決定した。除去する際のシナリオは、①優占種から、②レア種から、③優占種とレア種両方、④ランダムである。2014年の夏にプロットごとに定められた種数レベルとシナリオにしたがって、除去操作を行った。除去操作1年後(2015年)の夏に、各プロット内の1m四方の範囲にある植物の刈り取りを行い、生産量を測定した。2014年に設置してあったイネ科草本の入ったリターバックを2015年に回収し、その分解量を求めた。また、土壌CO2計測チャンバーを設置して土壌呼吸速度を測定した。
実験により操作した種数(2014年)と、操作一年後(2015年)の生産量の関係を調べると、正の相関が認められた。この関係をシナリオで分けてみると、シナリオ4では種数と生産量に関係はないが、シナリオ3では強い正の関係があった。土壌呼吸速度やリター分解については相関関係が見られなかった。