| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) I2-24 (Oral presentation)

気候変動で消失する砂浜の経済評価

*今村航平, 高野宏平(東北大・生命), 有働恵子(東北大・工), 森信人(京大・工), 今村文彦(東北大・工), 中静透(東北大・生命), 馬奈木俊介(九大・工)

日本の砂浜は気候変動による海面上昇によって消失することが予測されている。気候変動で失われる砂浜について、1)保全のために支払える金額(支払意思額)、と2)気候変動の将来推移予想の違いが砂浜への支払意志額に与える影響、を調べた。評価対象として全国から6地点の砂浜を選定し、日本全国の20代から60代までの男女合計16,247人を対象に選択実験(WEBアンケート調査)を行った。その結果、1)特定の砂浜の保全に対する最大の支払意思額は4722円/人だった。砂浜の機能ごとの価値は、防災>生物生育>レクリエーションの順に評価された。2)気候変動の将来推移予想の違いが支払額に与える影響については、異なる将来気候シナリオ(representative concentration pathways (RCP):代表的濃度経路)に対応する選択肢を提示したところ、「RCP4.5シナリオのように推移する」と予想した人の支払意志額が最も高く、以下「RCP2.6」>「RCP6.0」>「RCP8.5」>「わからない」の順に支払意志額が高かった。「RCP4.5」と回答した人は全体の約16%、「RCP8.5」「わからない」と回答した人がは合わせて全体の約70%を占めていた。これらの結果は、気候変動による砂浜の管理・保全における気候変動への適応策ではへの影響を経済評価する場合に生態系への影響を考慮することが重要であることを示唆しているほか、気候変動対策についてRCP4.5が現実的に実行可能であると考えている人が気候変動対策に最も協力的であり、多くの人々は気候変動対策について悲観的・あるいは興味を持っておらず非協力的であるということを示唆している。


日本生態学会