| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) I3-29 (Oral presentation)

ハイマツ葉内生菌の種組成とその地理的分布パターン

*三村琢磨(筑波大・環境科学), 広瀬大(日大・薬), 下野綾子(東邦大・理), 廣田充(筑波大・生命環境系)

植物の生育に深く関わる共生者として、葉内生菌の存在がある。葉内生菌群集構造は色々な要因(宿主、気候的要因、地理的要因)に影響を受けるとされているが、その詳細は明らかになっていない。Pinus tabulaeformisの内生菌群集は宿主の影響を強く受けていたことがわかっている。

今日ハイマツは東シベリアから本州の木曽駒ケ岳、光岳を南限として分布している。木曽駒ケ岳、光岳のハイマツは同じ気候帯に属していており、かつ互いに独立した集団である。この2地域の葉内生菌群集構造を比較することにより、葉内生菌群集構造に対する地理的要因の影響を検証することができる。

本研究では木曽駒ケ岳と光岳に生息するハイマツを対象に、ハイマツ葉内生菌の種組成を調査した。ハイマツ葉内生菌は合計17のOTU(Operational Taxonomic Units)に分類された。特に高頻度で見つかったOTUはRhodotorula psychrophenolica、Lophodermium nitensで、どちらも2地域の共通種であった。一方でそれ以外のものはすべて1地域でみつかった。このことより、宿主や気候的要因が同じでも互いに独立した宿主集団の葉内生菌は、地域ごとに特徴をもった群集構造を形成した可能性が示唆された。

さらに菌株のうち主要な2種(R. psychrophenolica, L. nitens)の、温度段階別の成長速度を調べた。その結果、R. psychrophenolicaは20℃以下でよく成長し、L. nitensは15℃から25℃でよく成長することを明らかにした。どちらの菌も、既存研究で知られていた最適温度域よりも生息環境に近い温度域でよく成長することが明らかになった。


日本生態学会