| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) J1-06 (Oral presentation)
日本におけるブナ科に属する種間のすみ分けという視点を提示する。ブナ科の種を、それぞれ気候帯 (気温) とストレスを軸に配列して、それらの種の分布パターンのモデルを示す。ブナ属、コナラ属、シイ属が独自の分布パターンを示すとともに、それぞれの属に属する種どうしのあいだにおいてもすみ分けの関係が認められる。コナラ属の多くはよりストレスが強く働く領域に進出するという特徴が認められる。この点に関しては、とくにアベマキとクヌギを例に述べる。また、東海地方で誕生したと推測されるフモトミズナラについても触れる。
ブナ科においては果実のより小さい種の方がより耐陰性が高いという傾向が認められる。果実がより大きいナラ類の多くは耐陰性が低く、他の系統の種との競争を避けてストレスがより強く働く領域に分布するという傾向を示す。これらのことに関連して、シイ属のスダジイとツブラジイの分布と生態について詳しく述べる。
ブナ科にカバノキ科の一部の属を含めて、ストレスと撹乱の二つの軸をもとに空間的配置のモデルを示す。その中で、撹乱と遷移の関係を組み込み、局所的極相の概念を提唱する。
遷移の理論にかんするいくつかの視点を提示する。たとえば古典的な倉内のクロマツ林からタブノキ林を経てスダジイ林へと遷移するという主張において、その後半の主張はデータから判断すると根拠が成り立っていない。
なお、上記の発表内容は、印刷予定の下記の論文の一部である。
【日本におけるブナ科のすみ分け─遷移の理論と実際の研究例にも言及して─. 一般教育論集 (愛知大学一般教育研究室) 第50号 (広木2016)】