| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-13 (Oral presentation)

里山の陸域水域移行帯における落葉の分解

*河内香織(近大農),渡部友貴(近大農)

森林から落下した植物リタ―の分解は、主に24時間以内の溶脱(リーチング)、微生物の定着(コンディショニング)、大型無脊椎動物の摂食の順に連続的に進行する。既存の研究では、有機物の分解速度は、リグニン濃度や窒素量などの有機物の質、温度や湿度などの無機的な条件、および、分解者群集によって決まり、またこれらは単独に影響を及ぼすだけでなく、相互関係を持ちながら作用しているとされている。里山の山腹斜面下部は、流下してきた水の集水部となり、水みちが変化しやすく、流量の変動も激しい。このような場所では陸域と水域の入れ替わり現象がみられ、物質循環を考えるうえで重要な場所であると考えられる。本研究では、上記のような里山山腹斜面に形成されている陸域水域移行帯に着目し、1、リターバッグ法による落葉の分解実験を行い落葉の分解過程と定着する生物を明らかにすること、2、溶脱実験を行うことで、落葉からのリンと窒素の溶出量を比較することを目的として実験を行った。実験には、近畿大学農学部の里山で見られるササ、タケ、クヌギ、コナラ、アラカシ、ソヨゴ、クスノキ、ツバキの8樹種の落葉を用いた。分解実験では、メッシュサイズが1cm四方のリタ―バッグに落葉を入れた。里山内の細流に2014年5月22日から9月26日の127日間設置し、回収時の状況について記録しながら回収した。回収したリタ―バッグ内の動物数をカウントし、同定した。溶脱実験では、クリーンカップに500mlの蒸留水を入れ樹種ごとに葉を1.0g浸し、15℃に設定したインキュベーターに入れた。24時間後に葉を取り出し、葉を浸した蒸留水の全リンと全窒素を測定した。回収時の場所ごとに出現した動物総個体数は同じ樹種であっても陸域と水域で異なった。リンや窒素の溶出量は樹種ごとに異なった。発表ではこれらのデータをもとに、陸域水域移行帯に落下した落葉の分解過程について考察を行う。


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