| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-14 (Oral presentation)

ヒノキ林における,土壌窒素動態と真菌・細菌バイオマスの季節的変動の関係

*横部智浩(京大院・農), 兵藤不二夫(岡大・異分野先端コア), 徳地直子(京大・フィ)

土壌窒素動態は,森林生態系の生産性や機能等に影響を及ぼすことからそのプロセスの理解は重要である。しかし,例えば日本の森林では夏季に無機態窒素濃度が高く冬季に低い等の季節変動を示すとされるが,そのメカニズムの解明は十分とはいえない。このプロセスには,真菌および細菌が主要な役割を果たすが,生理,生態等の違いから土壌中無機態窒素濃度への寄与の仕方が異なるといわれている。だが,土壌窒素動態との関連で研究された例は多くなく,真菌,細菌バイオマスの季節的な消長の理解でさえ遅れている。そこで本研究は,真菌,細菌バイオマスの季節的な変動を通じて窒素動態を理解することを目的とした。

調査は,琵琶湖南東の田上山地で行った。温帯針葉樹林でヒノキが優占し,広葉樹が混じり林床にはササが入る。調査プロットは,20m×20mに5点設定し,有機物層,鉱質土壌(0-10cm)を対象とした。季節変動を把握するため2014~2015年にかけ,ほぼ2か月毎に試料を採取し,PLFA濃度,無機態窒素濃度,純,総窒素無機化ポテンシャル等を測定した。

無機態窒素濃度は,鉱質土壌では夏季に高く冬季に低い傾向だが,有機物層では8月で高くその後12月にかけて低くなり,再び2月に高くなる傾向であった。真菌/細菌比は,有機物層,鉱質土壌の両方で,6月に低く2月で高い傾向を示した。気象との相関では,鉱質土壌において日照時間が全炭素,細菌PLFA濃度と正の相関(r>0.9, p<0.05)を示す等,植物活動との関連の可能性が示唆された。また,総アンモニウム態窒素生成ポテンシャルは,特に鉱質土壌において,PLS回帰分析より真菌PLFA濃度と正の関連が示唆された。だが,真菌,細菌PLFA濃度と純窒素無機化ポテンシャルおよび無機態窒素プールに関しては,明瞭な関係は認められなかった。


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