| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-002 (Poster presentation)
奄美大島は温暖多雨な亜熱帯海洋性気候に位置しており、複雑なリアス式の海岸地形をもち海岸植生も複雑になっている。そこで、奄美大島本土の各海岸にどのような違いがあるかを明らかにするために調査を行った。
調査方法:まず奄美大島全体の海岸線沿いの植生を環境省の25000分の1の植生図で分析した。現地調査は2014年7月と10月に奄美大島の31か所の自然状態に近い海岸で行った。そのほとんどの場所が環境省の植生図では自然裸地とされている砂浜であった。出現植物種名、優占種、砂質を記録し、写真を撮り一部では簡易的な植生図も作成した。また同じ海岸で漂着物が帯状に堆積した打ち上げ帯上に見られた種子及び果実を採集し、種名・個数を記録した。
結果:海岸線に沿って367.8kmの植生の中で、アカテツ‐ハマビワ群落が30%を占めて最も多かった。次いでリュウキュマツ群落、ソテツ群落となった。平坦な海岸に成立する植生は少なく砂丘植生は1.5%、マングローブ群落は1%であった。傾斜との関係を分析するとマングローブ群落は平坦地、ソテツ群落は急傾斜地に多いなどの傾向があった。現地調査では81種が出現した。種組成は北部の笠利地域とその他の地域に若干の違いがあったが、全体としては似ていた。クサトベラやアダン、シロノセンダングサなどはほとんどの場所に出現し、グンバイヒルガオやハマアズキも多くの場所で観察された。一方ツキイゲ、モンパノキ、ハマナタマメなどは各1ヶ所でしか発見できなかった。採集した漂着種子および果実は、奄美大島の北東部で最も多く採集され総計3740個であった。40種が同定でき、その内15種は海岸で生育が確認され、生育しない種も多くが島内から漂着したと考えられた。