| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-005 (Poster presentation)
近年,草地は種多様性維持や希少種の生育地として,その重要性が注目されている。半自然草地は人間の関与によって維持されるが,管理放棄や人工林への転換などによって,草地の面積が全国的に減少傾向にあることから,近畿・中部地方や阿蘇などの広大な面積を有する草地を中心に,その生態系の解明や保全に関する研究が行われている。一方,各地に点在する小規模な半自然草地も,草原生植物の多様性を維持する上で重要な場所であると考えられる。そこで本研究では鹿児島県本土における草地の種組成と種多様性を明らかにし,その保全について検討することを目的とした。
薩摩半島を中心とした10ヵ所の調査地において,9㎡の調査区を2~15個設置し,合計65の調査区を得た。対象とした草地は,小規模草地と比較的面積の確保された草地であり,草地の種類は耕作地・放棄農地や畦畔法面,半自然草地,人工草地とした。各調査区において植物社会学的植生調査を行い,種組成をもとにTWINSPAN法を用いて分析を行った。その結果,調査区は任意の段階で9つの群落型(A~I)に区分された。このとき第一分割で耕作地とそれ以外に区分され,第二分割で人工・畦畔草地のグループに大別された。半自然草地は,ススキ型,ネザサ型,ワラビ型などいくつかの型に区分された。さらに,特定の種群が見られるいくつかの型に区分され,この型は各地域と対応していた。比較的面積が確保されている千貫平や沢原高原の草地はいくつかの群落型から構成されており,希少種を多く含む種群で構成されていることが分かった。一方,小規模草地では例えば,希少種のスズサイコを含む種群は矢筈岳のみの群落に依存しており,小規模草地も希少種などの重要なハビタットとなることが示唆された。