| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-007 (Poster presentation)
トウヒ属針葉樹の多くは大規模撹乱後による一斉更新で純林を形成する場合が多い。このような針葉樹の純林は、落葉広葉樹等の侵入に伴い針広混交林へと移行する傾向がある。そこで本研究は、トウヒ属イラモミが広葉樹と混交する林分における更新動態および成長と地形要因の関連性を明らかにし、樹種の定着要因および林分動態を把握することを目的とした。長野県にある筑波大学川上演習林において、2007年に1.51 ha の調査プロットを設営し、2007、2010、2014年に胸高直径の調査、樹高および樹冠位置指数 (CPI) 測定した。各小区画は尾根と斜面に区分し、凹凸度 (IC) 及び斜面方位・傾度 (SL) を算出した。調査地はミズナラ (38.3 %) とイラモミ (22.6 %) の2種で全BAの約60 % を占めていた。イラモミのDBH、CPIおよび最大樹高はいずれにおいても他樹木種より大きく、樹冠の階層は周囲の樹木よりも高いことが示された。個体の成長と地形要因の関連性を評価するために一般化線形混交モデル (GLMM) を用いて解析を行ない、応答変数を胸高断面積 (BA) 及び相対BA増加率、説明変数を地形、IC、SL、相対標高、ランダム変数を各小区画とした。解析の結果、本調査地内のような小スケールでの地形的要因は、イラモミの成長に影響を及ぼさない事がわかった。イラモミの直径階分布は20 cm と90 cm 付近にピークをもつ二山型分布を示した。以上の結果から、本調査地におけるイラモミは、大規模撹乱を起点とした一斉更新によって他よりも早く定着・成長することで、その後に成長してきた広葉樹の階層構造よりもすでに上部に樹冠を形成していると結論した。