| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-009 (Poster presentation)

規則的な葉群モデルにおける群落生産の推定

*佐々木駿(東京大・理)

植物群落に入射する光は,生態系を駆動する重要なエネルギーであると同時に,複雑な光環境をつくることで,多様な植物を共存させる一つの要因となっている.これまで群落内の光の分布について,あるいは群落全体の生産量について,様々な推定方法が考案されてきた.本研究では,(1)群落内光環境を長期にわたって追跡し,(2)光環境ごとの最適な植物の形質をさぐることを目的とした.

日光植物園のオープンスペースにて光合成光量子束密度(PPFD)を1分ごとに長期間,直達光成分と散乱光成分にわけて実測し,単純化した葉群モデルのなかで,どのように光が分布するかをシミュレーションした.受光量から生産量を推定し,長期にわたる天候の影響をしらべ,さらに光―光合成曲線と葉面積指数の最適な組み合わせをさぐった.

6月22日から10月22日までの122日間のうち,一日あたりの水平面受光量の最大値は,終日快晴だった7月10日の50 mol photons/m2/day,最低値は雨天だった9月9日の2.4 mol/ m2/dayで,平均は21.1 mol/m2/day だった.夏の晴天時の光量40 mol/ m2/dayに達したのは6日間にすぎず,実際の光環境は,天候の影響を大きく受けていることがたしかめられた.また,PPFDの瞬間的な値は,夏の快晴の南中時では2000 µmol/m2/sであり,太陽を隠さない薄雲が天頂にあるような天候でむしろ散乱光が増し一時的に2500 µmol/m2/sとなることがわかった.

これらの光データをもとに,葉群モデルの生産量を推定すると,最大光合成速度が高いほど光合成に適した葉面積指数は低下するが,最大光合成速度と葉面積指数の最適な組み合わせは,天候によって変化することが示唆された.


日本生態学会