| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-019 (Poster presentation)

草原性植物のデモグラフィの種間・集団間比較 -ゲノミクスによる草原の歴史の再構築-

*成田あゆ(京都大・院・農),山浦悠一(森林総研・植生),楠本良延(農環研),井鷺裕司(京都大・院・農)

阿蘇山カルデラ周辺では花粉分析や植物ケイ酸体分析手法を用いて古植生に関する研究が数多く行なわれている。完新世の植生について、カルデラ内ではササ属・ススキの優占状況が続いたが、周縁部では7300年前の噴火による鬼界アカホヤ火山灰以降2000年間でササ属・ススキは減少し、マツとブナ科落葉樹による疎林が出現したとされる。本研究では従来の古植生研究手法において検出が困難な双子葉類草本種を主眼を置いた古植生推定を行なうことを目的に、現在の遺伝的多様性を解析し過去の有効集団サイズの変遷を推定した。

日本列島全域に分布する草原性草本としてカワラナデシコ、アキノキリンソウ、オミナエシ、センブリの4種を選び、阿蘇カルデラ周辺から各種1集団30個体程度の葉サンプルを収集した。RAD-seqにより得たそれぞれ2997~6466座の一塩基多型(SNP)のうちホモログの疑いが低く集団内の多くの個体で観察された座が417~1021座存在した。このうち120座をランダムに選出し、それぞれの座で作成した系統樹に基づくデモグラフィ推定を行なったところ、最長過去4万年の有効集団サイズの推移を推定することが出来た。

種ごとの生態を考慮して結果を統合し、阿蘇カルデラ周辺の草原性双子葉類草本の集団サイズの変遷について考察を発表する。


日本生態学会