| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-022 (Poster presentation)

樹冠と後生枝から考察する大径化したコナラの萌芽規定要因

*松本薫(明大院・農), 倉本宣(明大・農)

コナラは雑木林を代表する樹木であり,萌芽能力を活かし10~30年の周期で定期的に伐採し,薪や炭に利用してきた。しかし,放置によって大径化や加齢が進んでおり,大径化はナラ枯れ拡大の一因ともされている。コナラ林の持続性を保つために低林化が提案されているが,大径化や加齢によりコナラの萌芽能力は低下する。現状,ボランティア等による低林化が行われているものの,年数の経過したコナラ林における研究事例は少なく,萌芽する割合の目安や萌芽を規定する要因は不明な点がほとんどである。

本研究では,萌芽能力が低下するとされる40年生以上のコナラにおいて萌芽規定要因の解明を行った。その際,従来,萌芽との関連が報告されている切株直径や伐採高,年輪成長量 (伐採前5年間) に加えて,伐採前の胸高直径や樹冠面積,樹冠被陰率,後生枝の本数との関連を検証した。これらは現実の実務にも応用可能な調査項目として選定した。

調査地は関東地方の3つの丘陵地 (狭山丘陵,加住丘陵,多摩丘陵) とし,2014年11月から2015年1月の間に伐採された合計73株のコナラを調査した。調査項目は上述の項目とし,一ヶ月ごとに萌芽の有無と萌芽枝の本数を記録した。

2015年11月時点のコナラ萌芽株の割合は全体で32% (73株中23株) となった。萌芽規定要因は,萌芽の有無と萌芽枝の本数で共に胸高直径が萌芽に対して負の効果,年輪成長量と後生枝の本数は正の効果を示した。すなわち,大径化により萌芽能力は低下するが,年輪成長量のような最近 (伐採前5年間) の成長量が大きい株は萌芽しやすいことが判明した。また,後生枝の本数も萌芽に対して正の効果を示し,萌芽しやすい株として,①後生枝が30本以上の株,②胸高直径25cm以下,かつ,年輪成長量5mm以上,かつ,後生枝が18本以下の株の2パターンあることが明らかになった。


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