| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-024 (Poster presentation)

フタバガキ科樹木における種子散布距離と実生動態

*鈴木詩織(名大院・生命農),稲永路子(秋田県大・木高研),竹内やよい(国環研),戸丸信弘(名大院・生命農),中川弥智子(名大院・生命農)

フタバガキ科は東南アジア低地熱帯雨林の林冠層および突出木層において優占する分類群で、属または種ごとに異なる枚数の羽を持っており種子散布距離が多様であると考えられる。種子散布とそれに続く実生の定着や生残は種の分布パターンを決定することから、フタバガキ科実生の動態を解明することは、種多様性の高い熱帯雨林で多種共存機構にせまる重要なテーマであると言える。本研究では、フタバガキ科樹木のうち羽の枚数が異なる4種について、種子散布直後からの実生の動態パターンを明らかにしたうえで、実生の動態に影響を及ぼす要因について種間比較することを目的とした。

マレーシア、サラワク州のランビルヒルズ国立公園内に設置された4haクレーンプロットおよびその周囲に生育するフタバガキ科4種の実生1038個体を対象に、2014年1月からの19ヶ月間の生残と成長を記録した。また、実生の生育環境(林冠開空度、土壌含水率、同種個体密度、およびフタバガキ科個体密度)を測定した。生残率、絶対伸長成長量、生育環境について種間差の有無を調べ、種間差が認められた場合は多重比較を行った。さらに、一般化線形混合モデルにより、生育環境と初期樹高が実生の生残と成長に与える影響を解析した。

各種の生残率、絶対伸長成長量、および実生の生育環境は、すべての項目において有意な種間差が認められた。実生の動態を左右する要因を検討した結果、すべての種において初期樹高が実生の生残に正の影響を与えていた一方、生育環境の影響は種によって異なっていた。実生の動態パターンや実生の動態に影響を及ぼす要因における種間差には、種子散布距離の違いが影響している可能性が示唆された。


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