| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-031 (Poster presentation)

オオバナノエンレイソウの分布域の決定要因:緯度勾配に沿った適応度成分の比較

*佐々木駿, 川村弥司子(山形大・理), 山岸洋貴(弘前大・白神), 大原雅(北海道大・地球環境), 富松裕(山形大・理)

分布限界が生じるメカニズムを明らかにすることは生態学における中心的な課題である。生物種の分布に関する “abundant center model” では、存在量が分布域の中心で最大となり、分布限界に近づくにつれ減少することが予測されている。このような存在量の地理的変異は、成長や繁殖に関わる適応度成分を反映している可能性がある。

本研究では、東北地方に分布南限をもつシュロソウ科の多年生草本オオバナノエンレイソウ (Trillium camschatcense Ker Gawl.)を対象として、分布限界の生成に寄与しうる適応度成分の特定を試みた。昨年度の調査では、存在量や複数の適応度成分が地理的変異を示すことが明らかとなった(川村 2015)。しかし、特定の個体群のみが異なる挙動を示している場合があるため、集団数を増やした上で、緯度勾配に沿った存在量と適応度成分の地理的変異の再検証を行った。

その結果、分布南限に近い低緯度の個体群ほど、個体サイズが小さくなる傾向が見られた。また、大型動物による被食圧が高かった個体群を除くと、低緯度の個体群ほど種子生産量が少なかった。また、幼植物の加入率と種子重量は中緯度で最大となり、低緯度もしくは高緯度になるにつれて小さくなった。

以上の結果から、分布南限の個体群では種子生産量が少なく、種子重量が小さいことが、幼植物の低い加入率に寄与している可能性が示唆された。分布南限において種子生産量や種子重量に影響を及ぼす要因としては、個体数が少ない、または生育密度が低いことによる送粉効率の低下やそれにともなう自殖率の上昇、遺伝的浮動による有害遺伝子の蓄積などが考えられる。


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