| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-032 (Poster presentation)

森林における雪害と伐採による攪乱がもたらす下層植生の違い

*野田佳愛,倉本宣(明治大・農)

近年,森林は最も生物多様性に富む生態系であるとしてその価値が見直されている。なかでも下層植生の繁茂は森林の多面的機能を発揮するために重要である。この下層植生の繁茂には林内の光環境の確保が欠かせないため、林冠を破壊し、光環境を改善する撹乱は、下層植性に多大な影響を及ぼす。攪乱はその発生原因によって自然攪乱と人為攪乱に大別され、生じるギャップの規模や下層植生に与える影響も異なる。

森林の攪乱に関する研究は、攪乱のタイプごとにされているものが多く、自然攪乱と人為攪乱の両方に関して下層植生への影響を比較した研究例は少ない。そこで本研究では、自然撹乱によりギャップが生じた雪害地と、人為撹乱により皆伐された伐採跡地を対象として攪乱がもたらす下層植生の違いを明らかにすることを目的とした。

調査は東京都青梅市の御岳山山麓で行い,撹乱が起こっていないスギ林と撹乱の起こった伐採跡地および雪害地を対象とした。各調査区に2m×2mの方形区を9つ設置して群落調査および環境調査を行い,下層植生の種組成と撹乱による光環境および土壌環境の違いを比較した。

種組成および光環境に関しては,各調査区で顕著な違いが見られたが,土壌環境に関しては明確な傾向は得られなかった。種組成は地表面の光量子束密度と相関があり,地表面および下層植生直上の光量子束密度のばらつきと相関があった。したがって,種組成には光環境が重要であることが示唆された。また,ギャップが小面積である場合は、在来の低木や大型の草本が優占してLAIが増加し,地表面の光量が減少するため,侵入種や埋土種子の成長は見込めないことがわかった。


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